宮間 尚's profileそしてあの場所へBlogLists Tools Help

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    September 17

    今更ですよね~

    さて、「青が見た最後の夢」、完結いたしました。
    最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
    完結してから数日、放置してしまいました。プライベートで色々ありまして、メインのブログ更新だけで手一杯でございました。ヾ(;´▽`A``
    「完結してから今更かよっ」というツッコミが聞こえそうな気がしますが、登場人物のイラストなんかを載せようかな~…なんて思いまして…
                  ガイア                        親友ナタ&妹ルナ    
     
                         おまけ
                    
     
     
    え?沙羅とか三人組がいない?
    時間なくて描けませんでした(//∇//) てへっ
    Σ(゚Д゚;)!!
    かかかかか描きますっ描きますからツッコミ入れないでぇぇっっっっ
    多分来週位には… それ載せたら多分次回作に行けます。
    ……多分ですよ?
     
    September 11

    エピローグ

    「…ガイア」
     目を開けると、沙羅が微笑んでいた。
    「沙羅」
     つられて微笑んでしまう。沙羅は視線を横に向けた。つられて横を見ると、灰となり、消えていく自分の体があった。ガイアの魂は、あの身体と共に消えるはずだった。なのに今、自分の身体が消えていくのをみている。
    「…なぜ、俺はここに…」
    「私が、貴方にキスしたから」
    「え?」
     沙羅は消えていくガイアの身体から視線をはずした。
    「あのままでは、貴方の魂も身体と一緒に消えてしまう所だった。でも私はそれに耐えられないから、自分の転生できるはずの力を貴方に分けたの」
    「どうゆう…?」
    「私たちはもう、転生は出来ないの。今に魂の形もなくなるわ」
     そう言って沙羅はガイアに抱きついた。
    「でも私たち、大気になるの。貴方が守ってきた地球の大気になって、ずっと見守っていける。…貴方の大事なものは、私にとっても大事なものよ。貴方の使命を、私にも手伝わさせて」
    「沙羅…」
    「ダメって言っても、もう無理よ」
     そう言って沙羅はガイアを見て笑った。
    「私はもう、転生する力を貴方に分けてしまったもの。私は貴方のそばから離れないって決めたの」
    「沙羅。俺…私は、地球を守っていけるのなら、どんな事だって嬉しい。でも、君を巻き込みたくは無かった」
     そして沙羅を抱きしめる。
    「そう思っているのに、沙羅と共に地球を見守る事ができるのは、こんなにも嬉しい。私は、なんて我儘なんだろう…」
     魂が大気に溶けていく。
    「ありがとう。沙羅」
    「…私たち、ずっと一緒よ?一緒に地球を見守りましょう?」
     互いの唇が触れる。
     そしてそのまま光となり、大気となる。

     あなたの為に、愛を捧げましょう。
     あなたのために、詩を謳いましょう。
     私はあなたを包み、守りましょう。
     あなたが私を包み込むように、私もあなたを抱きしめる。
     そうして、私たちは未来を見守りましょう。
     幾千もの時、幾億もの夢を紡ぎながら。
     この街を国を世界を惑星(ほし)を守っていきましょう。
     
                                                                             
     
     
     
                                                                                                                       完 
    September 10

    6. 愛児 (最後の夢)

     ドサリッと、草の上に横たわった。
     顔が青ざめているのがわかる。荒い呼吸をしていた。力を使いきった為に命の炎が消えようとしていた。
     朦朧とした目で辺りを見た。
    「ここ、は…?」
     何処からともなく風が吹きガイアの身体を包みこんだ。
     ガイアは、夏の太陽の匂いのする広い草原にいた。噴煙と火柱のせいで紅くもあり黒くもあった空は青空にかわっていた。小鳥が飛び交い、そして囀りの声。地球は救われたのだという証拠にもなった。
    『ここは一族が殺されたあの森か…?セイラではないが、ここで、この地で死ねるのが何よりの幸せだな』
     激痛に顔を歪めながらも弱々しく笑った。もう二度と、この地には戻るまいと思っていた。帰ってくるときは、死ぬ時だと心に決めていた。死ぬときくらい、一族が滅んでいった場所で、同じ場所で死にたかった。
    『まだ私が生きているということは、力を完全に使いきった訳ではないようだ。…どうせ、死ぬのなら、思い出の中で死んだほうが…』
     目を閉じ、ゆっくりと口を開いた。
    「我が、愛しい一族のメイア、最後の夢を…私の愛した者達の夢で、永遠の眠りにつかせてくれ」
     そして、柔らかくて優しい光に包まれ、ガイアは宙に浮いた。
     一族の皆の顔が浮かんでくる。孤児院の皆の顔が浮かんでくる。そして、沙羅の顔が。
    「沙…羅……」
     うっすらと目を開けた。…もう、何も見えなかった。真っ黒な闇の世界だけが広がっていた。
    「………?」
     何も見えない闇の世界の中に、一点の光が見えた。
     …あれは?
     その光は、だんだん近付くにつれ、それが人の形をしているのに気付いた。
    『…ア。……ガイア。愛しい、ガイア…』
     ……沙羅?
     緑の豊かな黒髪に白い肌の沙羅が、ゆっくりと天から降りてきて、その細い美しい二つの手がガイアの頬を包んだ。
     紫に近い色になったガイアの唇には笑みが浮かび、土気色した肌に涙が流れた。
     声にならない声で、呟いた。
    「…愛してる。沙羅だけを、愛している……」
    『私も、ガイアを愛している』
    「けど、俺はずっと君をだまし続けていた。俺は、何でも沙羅に話したつもりだ。でも、たった一つだけ、秘密にしておいたことがあった。…あの日、義父母が死んだあの日。俺は元の姿に戻って一人で生きていくべきだったのかもしれない。そうすれば、沙羅、君は死なずにすんだのに。沙羅は綺麗だから、愛してくれる人は沢山いただろうに。俺が君を、不幸にしてしまった。ゴメンな、沙羅…」
    『そんなこと、言わないで…。貴方が元の姿に戻って一人で生きていたら、私は誰も愛せなかった。貴方のおかげで私は生きる喜びを知ることができたのに。私は……貴方が私に何か隠しごとをしていることくらい、ずっと前から知っていた。だって、貴方って、嘘をつくとき、かすかに目をそらすんですもの。普通の人なら気付かないくらいにかすかな事だったけれど、貴方を誰よりも見つめていた私だけが知っていた。いつか、きっと話してくれるだろうって信じていた。貴方の私への愛が本物だって知っていたし、私も貴方を愛していたから、よくわかる。貴方が隠していたことも、薄々知っていた』
     …秘密を、知っていた…?
     …これは、夢だ。メイアの力によって見ている夢だ。だから、俺の中にある沙羅への罪悪感を少しでも無くそうと、夢の力が働いているんだ。そうでなければ、何故沙羅が私の目の前にいるのだ?
    『小さな頃から大人の瞳をしていた。小さな頃から変わらない声、変わらない優しさ。貴方のすべてが私達とは違っていた。それに気付いていた人は、きっと私だけ。貴方の腕に古い傷があるのを知るまで、私も気付かなかった』
    「…傷?一族が殺された時に掠った矢に毒が塗っていたため一生残ってしまう傷になってしまった左腕のあの傷のことか?」
     ポタリッと、頬に何かが落ちた。涙…?幻の筈なのに?
    『…それでも、愛していた。どんな秘密を持っていようと、どんな未来が貴方を待っているのか、私には見当もつかなかったけど、…その未来を私達は二人で歩くことが出来るのか、何も、わからなかったけれど、貴方を忘れることは出来なかった。魂が身体から解放されてから、ずっと貴方を見ていた。そして、孤独に生きてきた意味を、貴方の秘密を知ったの。でも、愛さずにはいられなかった』
    「沙、羅?何、を…?」
    『私は、貴方とずっと一緒よ?』
    「だめだ、沙羅。君は、生きるんだ。頼む、君だけでも、生きて…」
     涙を流し、首を振り沙羅が言った。
    『貴方がいなければ、私は生きても仕方がないの』
    「沙、羅…」
     唇の感触がした。最後に触れた沙羅の唇は、…警察の霊安室で最後に触れた沙羅の唇は冷たかった。なのに、いま心の底にまで届くような暖かさ。
    『愛しているわ、ガイア。たとえ貴方が人間でなくても、私を愛してくれる限り。私の魂が存在する限り、貴方の魂が、存在する限り』
     何かを掴むように弱々しく上げられたガイアの右手が、コトリッと…。
     その瞬間、海は地球の溢れ出す涙を受け止めきれず、空は、地球の心の乱れの為に強風が吹き荒れ、嵐になっただろう…。海は、空は、この位の地球の哀しみなら見守ってやるべきだと思った。
     きっとこれが、地球が泣く最後の日なのだから……。
    September 09

    6. 愛児 (終焉)

     地球の歓喜の声が響いた。
    『ああ、愛児達の愛が私を包み込む。懐かしい愛児達よ…。何と暖かい感情だ。……遥か昔、私は愛児達の愛に包まれていた、この愛はいつまでも、永遠に続く物だと信じて疑わなかった。だから、…あの日、愛児が滅んだとき、生き延びた者がいるのか捜しもせず、ただ悲しみに暮れ心を閉ざし人間を憎んでいた。愛児達よ、お前達の愛してくれた地球が間違っておったわ!術にかかってしまうとは…いいや、これは私の弱い心があの者達の言葉に乗せられてしまったのだ。これは、私の人間に対する絶望感が生み出してしまった結末なのだ。愛児達よ、…主らの愛、確かに受け取った。広い心で私は私の寿命を全うしよう。…末裔の王よ、主の言う通り、私は人間達を、…愛している。愛児達を殺したときも、セイラ達の村人を殺したときも、人間達を憎みながらもどこかで愛していた。そして今も、愛している』
     そう呟いた地球の目から、大粒の涙が落ちた。それは、蒼い涙。それは次第に地球の身体を支配し、美しい蒼が地球を包んでいた。 俺は黙って見つめ、ただ微笑んでいた。
    『末裔の王よ、主の名は?』
     少し気取って答えた。
    「ガイア・コスティルです」
    『ガイア?私と同じ名?では、…主はナユタ・コスティルの子?』
    「父を?」
     既に平常心を取り戻した地球。全世界の噴火は止まり、綺麗な蒼に戻っていた。
    『主同様、民達を愛しておった。一族を守ろうと少し間違ったことをしてしまったが、責めたりはせん。あの時代では、ああするより他なかったのだから。心優しく、良い王だった。…ガイア、主は父王を越えたか?』
    「いいえ、父は今でも越えられない壁です。父のように冷静に物事を見極める力はまだまだ足りません」
     そこまで言った途端、急に胸が苦しくなり咳き込んだ。
     ボタボタと、大量の血が溢れてきた。しかしその血は衣服を汚す前に灰となり消えていった。身体中に激痛が走り、もう力を入れる気力さえも残っていなかった。
     横倒れになり、それでも地球を見て微笑みいった。
    「…地球、貴方はもう大丈夫ですね?私達一族が滅びても、自分のせいだと嘆いたりしませんね?地球の為に、一族が滅んでくれたのだと、思ってくれますね?」
    『…安らかに、眠るがいい愛児よ。お前達の愛はしかと受け取った。このようなこと、二度とせぬ』
    「一つだけ、私の願いを聞いて頂けませんか?」
    『何だ?』
    「…もう二度と、我ら一族のように、不思議な力を持つ者をこの世に送らないでください。滅んでゆくのは、我ら一族とセイラ達だけで充分です。もし、また貴方の身に危険が及ぶようなことがあれば、力を持つものを生むのではなく、私を復活させてください。私は貴方のためなら、何度でも蘇り、滅び、貴方のために、歌を歌いましょう」
    『…約束しよう』
     ガイアは微笑み、その場から消えた。
     地球は大きな涙を流した。その涙は海が受け止め海水にした。
    『さらばだ…愛児…』
     
     
     元通りに直り、光の球に守られていた孤児院で、一言も交わさずにテレビに釘付けだったセントポーリア孤児院にいた皆が一斉に振り向き目を見張った。
     テーブルの上から何か堅い物が落ちたような音がしたため、緊張の糸を切った物の正体を見るように皆が振り向いたのだ。
     コロコロと音をたてながら転がっていたのは二つのイヤーカフだった。ガイアから渡され院長の掌にあった筈のそれが一瞬のうちに消え再びここにあるのだから誰もが驚くのは当然のことだろう。
     薫が震える声で言った。
    「がぁ兄ちゃん、死んじゃったの?」
     院長は少し考え優しく言った。
    「ガイアは、沙羅の所へ逝ったのだ。私達を、地球を救ってな…」
     そう言い院長はイヤーカフを拾い、ガイアが持ってきたフォトスタンドの前に置いた。
    『もう、戻ってこないのか?ガイア…』
     院長は心の中で思い、孤児達に気付かれない様に深い溜め息をついた。
    September 08

    6. 愛児 (まなしご)

    「誰だ…?私を王と呼ぶものは…?」
    『…今、母の胎内にいる。あなたに助けられた私…」
    「まさか、ホテルの……?」
     それは、あのホテルの瓦礫の中から助けだした胎児の声だった。胎児の声が俺の心に流れ込んでくる……。
    『アース一族の若き王…。私は、今度こそ生きたい』
    「今度、こそ?」
    『私は以前、貴方に会っている。もうずっと昔、あの時も私は胎児だった。お忘れか、あの時の私の母の名は、メイアと言った』
    「…メイアの子だったと、言うのか?あの時、メイアと共に死んでいった胎児だったと」
    『あの時、私は死を覚悟した。私はあの時、予知能力を授かっていた。そして、自分の死を知った。どうあがいても私は死ぬのだと諦め、覚悟した。母、メイアは生きることを望んでいたのに。だが、今は違う。貴方に助けられ、私は今度こそ生きたいと心から願っている、どうか、今度こそ……』
    「分かってる。私はそのために、今日まで生きてきた。命ある者達を、地球を救うために!」
     身体に残っている力を振り絞り立上がり、両手を頭上にかざした。
    「命が削られたって構わない!皆を助けられるなら!」
     瞬間、身体が金色に包まれた。身体の底からわき出てくる力。自分でも、まだこんなにも力が残っていたのかと思ってしまうほどの強力な力。
     これは民達の、想い…?
     ガイアの中で生きていた、民達の想い。許してくれるのか、民達は。人間達を助けても、いいというのか。
     微かに、民達の声が聞こえた気がした。
    『貴方様の思うように…』
     と…。
     目を伏せ、民達に感謝した。そして顔を上げ、民達の力を放った。
    「ハァァッ!」
     身体から放たれた無数の光は、地球の内部から地上に向かって四方に飛び散った。
     そしてその光は、火災が起きているところでは、炎で起こった風を沈ませ、雨を降らせた。家屋が崩れ、生き埋めになった者達は崩れ落ちた家屋が宙に浮き、救助隊によって救われた。津波にさらわれた者達も、光の球が身体を包み、陸へと運んでくれた。
     誰もが何が起きたのか分からなかった。
     薫を始め、孤児院の者達を除いて。
     クラリッと眩暈がした。激痛が身体中を襲った。それらに何とか絶え、両手を前に出し手を合わせた。
    「我が…我が、愛しいアース一族よ、…この手に、愛を」
     すると、合わせた掌から光の筋が幾つも現れ、その光は膨れ上がり、手を離すと掌の少し上で宙に浮き、さらにゆっくりと膨れ上がった。
     その光は今目の前にある地球の瞳より少し大きめくらいまで膨れ上がった。右手でその光を支えるようにし、左手の人差し指を額に置いた。
     地球をチラリと見ると尚も振動が止まらずにいた。
     ……蒼さがまだ足りない。このままでは地球は爆発しかねない。まだ、力は残っている。地球を救うだけの力は、まだ残っている!この命をこの世にとどまらせてている、薫や院長先生、そして民達の愛を、この身体に残っている全ての力を愛に変えれば、地球を救えるはず。何としてでも、地球を守ってみせる。私の命と引き替えにしてでも救わなければ…!
     目を伏せ呟いた。
    「私の命をもって地球に愛を…!」
     人差し指が光りに触れると、光りの球はゆっくりと進み、地球に触れた途端、光りが広がり地球と岩肌をも光りが包み込んだ。
    September 07

    6. 愛児 (地球)

    「薫っ、ああ、無事で良かった!…この光りの球は一体?」
     その言葉を合図のように、光りの球は大きくなり、孤児院のある敷地をすっぽりと覆った。その途端、地面の揺れが院長達には感じられなくなった。
    「…地震が止まった?そんな馬鹿なこと…」
     院長の腕の中で薫が目を覚ました。
    「薫っ、どこか怪我はないか?」
    「うん、がぁ兄ちゃんが守ってくれたから大丈夫」
    「ガイアが?」
    「そうよ、皆のお家も守ってくれるって!」
     顔を上げ、前方を見た院長は驚き声を上げた。
    「なっ。そんな馬鹿なこと…」
     孤児院が、崩れかかっていた孤児院がもとに戻っていたのだ。地震で割れた窓ガラスも崩れた屋根も、何もかもがもと通りに直っていたのだ。
     薫が威張って言った。
    「ねっ。いった通りでしょ?がぁ兄ちゃんが守ってくれたのよ」
     薫達の無事を確認し、顔を上げ地球を見て言った。
    「いけない地球よ、そんなことを考えてはいけない!私が称え、尊敬しているのは、我らアース一族が何よりも愛しているのは地球、貴方だけです!我ら一族が滅びるのは、人間達のせいではなく、貴方のために滅びるのです!」
    『…私のため?私が、愛児が滅んでしまうことを願っているとでも?』
    「違う。地球は我らの象徴です。我らは、象徴を愛し守る者。その象徴が危機に瀕しているとき、我らは命という鋼よりも強い盾で象徴を守り抜く一族。象徴を守り抜き、自分の命を無くしたとしても、それを喜びと感じられる一族。それが、アース一族です。…確かに、私の命が削られたのは私が深く考えずに力を使ったせいです。それがなければ私はもっと生きられたかもしれない、生きて、貴方の側で一族の思い出の中で生きられたかもしれない。けれど、本当にそれが幸せなのですか?思い出の中で生きることは幸せですか?我ら一族の者が一人でも生きていると、またいつの日か貴方の身が危険にさらされる事にもなります。逆に、我らが滅びれば、貴方はもう二度と危険という言葉に襲われることがないと言うことにもなります。…思い出は大事な物です。思い出を大切にするのは大事なことです。けれど思い出とは、生きて行けません。現在と、未来を見てください。…過去ばかりを思い出し、自分を傷付けることはやめてください。…滅んで、この身体が無くなろうとも、我らアース一族は貴方を愛し守り続けますから!」
     ガイアは地球の隅のほうに蒼さが戻ってきたのを見逃さなかった。そして続けた。
    「貴方は、人間達を愛しているのでしょう?そうでなければ、憎んでいるのなら、人間達が我ら一族を滅ぼした時、人間も滅ぼすことができたはずです」
    『違う。私が愛しているのは、愛児であるアース一族だけ』
    「では何故今日まで人間達が生きているのです!何故何百年も昔に滅んだはずのアース一族が不老不死となり生きているのです!それは貴方が、…貴方が無意識のうちに、いつか危険にさらされる日がくると思い、私に、このような運命をもたらしたのでしょう?大昔、人間という生き物をこの地に生み落とした時から、こんな日がくると思い我らアース一族を作ったのでしょう!?」
     地球に大きな振動が走った。少しずつ蒼さが広がっていく。ガイアは導くように子守歌を歌い出す。
    『おお…おおっ!』
     瞬間、俺の目の前に大きなスクリーンのようなものに地球の記憶が映り出した。
     それは、地球が出来、現在までの永い永い時だった。恐竜といわれる生き物から次第に人間が世界を支配し、現在まで、物凄い早さでそのスクリーンのようなものに地球の記憶が映し出されていた。
     その間も、ガイアには地上の人間達や動物、植物達の悲鳴が聞こえていた。
     胸が苦しくなる。息ができなくなってしまいそうなほどの悲鳴。
     そしてその悲鳴の中から、孤児院の皆の声が聞こえてきた。
    『がぁ兄ちゃん、皆を守って』
    『怖いよぉ、兄ちゃん』
    『ガイア、無理しなくてもいい、だから、どうか無事で』
    『出来ることなら、地球を救って』
    「皆…」
    『……若き王……』
     ガイアは顔を上げ、意識を集中した。
    September 06

    6. 愛児 (薫)

     激しい揺れとともに地球の半身を埋めている岩肌が端のほうから崩れ始めた。
     地球が、滅びようとしている?瞬間、悲鳴が聞こえた。薫の声だった。
    「薫っ!?」
     とっさに目を伏せ、地上の様子を探った。地上が今、どんな様子なのかがよくわかる。地上は大地震が起こり、家屋が次々と崩れていた。薫達のいる孤児院の様子を探った。
     老朽化していた孤児院が崩れかかっていたのだ。
    「薫っ!どこにいるんだ!返事をするんだ、薫っ!」
     すでに避難していた孤児達を守るように、何人もの孤児達を抱き抱えた院長の悲痛な叫びが辺りに響いていた。
     ガイアは薫の居場所を探った。
     …どこだ……どこにいる、薫。
     ……がぁ兄ちゃん。
    「薫っ?どこだ、今どこにいる?」
     薫は崩れかかっていた孤児院の中にいた。
     他の皆がすでに避難している建物の中に薫一人だけが残っていたのだ。薫は部屋の隅で小さくなって震えていた。その手の中にはガイアが持っていったフォトフレームがあった。
     泣きながら、震えた声で、まるで自分自身を励ますように呟いた。
    「……私が、守るの。がぁ兄ちゃんが持ってきた、さらお姉ちゃんと皆で撮った写真。絶対に、私が守るの。怖くないもん、がぁ兄ちゃんが教えてくれたお歌を歌っていたら、院長先生が来てくれるもんっ。地面がグラグラ動いていたって、ちっとも怖くないもん、…怖く、ないもんっ」
     ポロポロ涙を流しながら薫はそう呟いた。
    「薫…。フォトフレームを取りにいったのか?」
     あんなもののために薫は、まだ小さな薫は今、一人で恐怖と戦っているのか…?
     テレパシーで薫の心に話しかけた。
    『…薫』
    「…がぁ兄ちゃん?がぁ兄ちゃんなの?」
    『そうだよ。薫、泣くんじゃない。今、兄ちゃんが助けてやるから』
    「本当?もう、怖くない?」
    『大丈夫、怖くないよ。安心して、目を閉じて』
    「がぁ兄ちゃん…。お家が、皆のお家が壊れちゃうよ。どうしよう!?」
    『…大丈夫。全部、兄ちゃんが守るから、だから、薫。薫はその写真を守ってくれる?』
    「うんっ。ちゃんと守るよ!」
    『よかった。さあ、目を閉じて』
     目を閉じた薫の身体を、光りの球が優しく包んだ。その球は落ちてくる蛍光灯や天井のタイルなどから薫を守り、院長達のいる外へとテレポートし、ゆっくりと薫を院長の腕の中へと運んでいった。

    September 05

    6. 愛児 (説得)

    『主は、真のアース一族の王なのか?』
    「このサークレットやバングル、そして、王だけが持つイヤーカフを持っていることが、何よりの証拠ではないでしょうか」
     間違いない。この声は、先ほど聞いた地球の声だ。
    『確かに…。生きていたのか、私の愛児(まなしご)よ…。遥か昔のあの日、愛児は皆滅びたものと思っておったが…』
     重々しく、シーラカンスの口が開く。
    「私だけが民達の手によってあの悲劇から逃れられ、今日まで生きてきました」
    『なぜ主は私に会いにきたのだ?』
    「それは貴方が一番知っていることでは?私は貴方の悲鳴を聞きました」
    『……人間を助けるのか?愛児を殺した人間達を』
    「私が貴方を助けるのは、人間達の為だけではありませんよ。貴方の中には人間以外の生き物が沢山いる、それとも、貴方は死にたいのですか?貴方の中に生きる全ての者を犠牲にしてまで」
     するとシーラカンスの形を取っている地球が楽しそうに笑い出した。
    『愛児に説教をされるとは。一眠りしていた間に随分と逞しくなったものよ。確かに…私はまだ死ねぬ。だが見よ、私を…』
     そう言うと地球はゆっくりと進み、青い惑星の中に吸い込まれるように入っていったかと思うと、柔らかな光に包まれた。
     光がおさまり見ると、地平線のある限りまで存在する岩肌に左側の半身を埋め、大きめの地球儀大の蒼い瞳を持つ巨大なシーラカンスが目の前にいたのだ。
     先程まで目の前にあったはずの地球は、今は巨大なシーラカンスの瞳として存在していた。その身体は全体的に蒼く染まっており、深い海の色のように時折不思議な色に変化した。しかし、蒼い瞳が、蒼い身体が見る見る内に赤く、黒く濁ってきた。
    「なっ!」
     そして地平線のある限りまで存在する岩肌もが赤く、黒く濁ってきたのだ。
    『…見よ。私の瞳を、私の身体を。主ら一族が生きていた頃に比べ、蒼さが次第に濁り始め、今はこの様な醜いどす黒い赤に変わってしまった。自慢だった蒼さは今はもう無い』
    「それはセイラ達の、あの三人によってかけられた術のせいです!目覚めてください地球よ、目覚めることができれば、蒼さは戻ります!」
    『私は…疲れた。人間達を見守っていくことに』
    「地球よっ!……っ痛!」
     肋骨に激痛が走った。身体のあちこちに傷が白い短衣が赤く染めていった。
     激痛にたえ歌い出した。一族の子守歌を。心を込めて、地球のために、何度も何度も。
    『おお、懐かしい…愛児の子守歌』
     地球の心の震えが伝わってくる。
    「地球…私はつい最近まで、人間を忌み嫌っていました。人間の社会の中で生きながらも人間を恨んできた。十数年前、私は初めて人間を愛しました。人間に心を開いたとき人間も悪くないな、と思いました。確かに人間は自分達のことしか考えずに貴方を、地球を汚してきた。けれど、人間だって馬鹿ではない、少しずつ、貴方を、地球を綺麗にしようという運動が起きている。貴方はそんな人間達を優しく見守ってやる義務があるはずです」
     再び激痛が襲った。肋骨の痛みではなく身体中を激痛が襲った。
    「ぐっ!何だ、この痛み、は…」
     骨折の痛みではない。傷の痛みでもない。では一体。……!
    「ぐっ!ごほっ」
     口元を押さえ、膝をつき咳き込んだ。ポタリッと、指の隙間から落ちた血は次の瞬間灰となり消えてしまった。
    「!…死期が、近い?」
    『…主は、その手で、二人を殺めただろう?主は私を助けるために生きてきたと言っておった。厳格に言えば、たとえどんなことがあっても、主のその力は当初の目的以外で使ってはいけないのだ。たとえそれが良いことであっても。主は今まで私に関係ないことで幾つ力を使った?私に関係ないことで力を使う度、主の寿命が削られているのだ』
    「削られている…?」
     薫の両親に、薫に愛を伝えさせたことが、ホテルの爆破事件のときに若い夫婦を、新しい命を助けるために使った力が、命を削っていると?
     軽く目を伏せ、口元の血を拭い、自称的に笑い言った。
    「けれど、それは私が望んで、彼等のためによかれと思いやったこと。そのために私の命が削られているとしても、悔いはありません」
     立ち上がろうとしたが、身体に力が入らなかった。
     もう、それ程の力も残っていない…。
    『…そしてまた、私は一人になるのだ。最後の私の愛児まで、人間達のせいでいなくなってしまうのか。……憎いぞ』
    「地球?」
    『憎いぞ人間共!たとえ、私が生んだ者達とて、私の愛児を殺すのは許せぬ!私諸共滅びるがいい!』
     瞬間、空間が揺れた。
    「なっ!」
    September 04

    6. 愛児 (愛しき者)

     …この憎しみは、けして今でも忘れる事が出来ずにいる。だが…愛しい一族を殺した者は今はもう生きてはいない…。
     一族を殺した同盟も、繰り返される戦乱によってすぐに滅びた。一族が仕えていた国王も、悲惨な最期を遂げている。
     怒りを向ける人間はもういない…。
     
     そして、サラの顔が浮かび上がる。
     お互いの心が通じあい、幸せだったころ。
     小さい子の世話をし、養子にと孤児院を出ていった子を笑顔で送り、そのあと決まって院の裏にある林の中で泣いていた。捜しにきた私はそんなサラを見つけサラの肩に手を置く。ビクリッと肩を震わせサラは振り向き手の主が私とわかると私に抱きつきその胸の中で泣いた。私は優しくサラを抱き締め無言でいる。
    「幸せになるといいね、あの子。私、別に羨ましくて泣いているわけじゃないのよ、私はこのままでもいいと思っている。悲しいのは、あの子がいつか私を忘れてしまうってこと…。忘れられてしまうほど辛いことはないわ。どんなに私があの子を覚えていてもあの子は忘れてしまう…どうして?」
    「沙羅…確かにあの子はここでの生活のことを忘れてしまうかもしれない。だけど、俺は覚えているよ。沙羅があの子を大事にしていたこと、優しくしていたこと。それは、院の皆が知っている、誰も知らないわけじゃない。だから、そんなに泣かないで」
     そう言って沙羅の二つの瞼にキスをし、強く抱き締めた。私の温もりが沙羅に伝わるようにと。

     フッと、目を開け昔を思い出し、小さく笑った。
     私が名をつけたナタも、あのような再会をしなければ、ルスカとナタと私とで、楽しく会話が出来たのだろうか…。
     もしかしたらルスカとセイラを一緒にさせようと、ナタと相談したりしたのかも知れない。
     あの子に親友ナタの名を付けた事に満足していたかも知れない。
     全てを過去形のものにしてしまったのは、私自身だ……。

     

     身体を包み込んでいた何かが消えた気配がし、目を開けた。
     ……そこは、真っ暗だった。明りという物が何一つない闇そのもの。
     地に足がついているのか、または無重力なのか…。
     顔を上げ、前方を見た。遥か遠くに小さな明りがポウッと輝いたのが見えた。
    「あれは…?」
     その言葉を合図のように小さな明りを中心にあちこちに同じような小さな明りが輝き出した。その光は白、赤、黄、そして青など様々な光で、数えきれない無数の光が俺を包んだ。ふと、視線を感じ、振り向き驚いた。
     そこには地球があったのだ。蒼く輝く美しい星。ガイアが愛している美しい星。
     辺りを見回すと太陽と月までもがあった。
    「な…ここは宇宙なのか?そんなバカなこと…、いくら私でも呼吸ができるわけが」
     歩きだし、地球の側に来てここが宇宙空間ではない事を知った。
     地球の大きさが大きめの地球儀くらいしかなかったのだ。
     地球に触れようとしたとき、フッと辺りが暗くなった。
     辺りで輝いていたはずの星々が消え、太陽と月さえも消え、地球の輝きだけが暗闇の中を明るくしていた。
     再び地球を見た私は驚き声を上げた。
    「な、に?こんなことが…」
     地球の光り輝いていた蒼がどす黒い赤に変わっていたのだ。その赤は血のようにも見えた。
     驚愕していた私の耳に水の音が聞こえてきた。振り返って見ると、雫をピチャンと落とし、宙に浮いていた魚がいた。
     …シーラカンス?……!
     突然、そのシーラカンスの身体からポタリッと、赤い何かが落ちた。
     血か?怪我を?だが、何故こんな所に、しかも水の中でもないのに…。まさか……。
     何処からともなく不思議な声が聞こえてきた。

    September 03

    6. 愛児 (怒り)

    「私と国王の一人娘である姫が結婚すればいいのだ。これは噂だが、姫は私を気にいっているらしいからね」
    「そんな、兄さまは、それでいいの?」
    「私に愛する者がいて、こんな話しが持ち込まれてきたらすぐに断る。だが、今の私にこの話しが持ち込まれたら、迷わず受ける。それが民達の為だ。そしてそれが私の運命だ。結婚してから姫を愛することだってできるのだから」
    「それは違うわ、兄さま」
    「違うかも知れない…。だが、私が死ぬことで民達が助かるというのなら、私はまよわず死を選ぶ。これは王子としての考えだ。この考えは、たとえ神が私に命令したって絶対に変えない」
    「兄さま……」
    「だから、お前は幸せになれ。私の分も。ああ、頼むからそんな悲しそうな顔をするのは止めてくれ。私の昔からの願いは民達が平和に暮らせることと、お前が幸せになることだった。王家の者は国の繁栄の為に犠牲になることが多いらしいが、その犠牲になるのは私一人で十分だ。お前に好きな人がいるなら、その者もお前のことを大事に思ってくれているのなら、私は心から祝福しよう」
     そう言い、私はルナの今にも泣き出してしまいそうな顔を見、そしてその頬を二つの手で包み、
    「私の願いをかなえてくれ、ルナ。私はお前の幸せに満ちた顔が見たい」
     そう言うと、ルナは泣き出し私の胸で泣いた。
    「兄さま…!兄さま!」
     翌日、私はナタと狩りに行った。
     小高い丘に身を潜め、獲物を待っていた間私はナタに、
    「聞いたよ。ルナから」
     するとナタは顔を真っ赤にし、
    「…もう聞いたのか。まだプロポーズして二日しか経っていないのに」
    「二日あればルナの心は完全に決まるさ」
    「それで、……お前は反対か…?」
    「どうして私が反対しなければならない?」
    「じゃあ……」
    「私は反対などしないが、ルナの気持ちはどうかなどは知らん。あとで自分から聞くんだな」
    「ガイアは聞いているんだろ?ルナの気持ち。頼むよ教えてくれよ。俺ずっと不安で眠れないんだから!」
    「へえ、お前って案外気が小さいんだな。そんな姿をルナが見たらガッカリするぞ」
    「なにぃ。こら!ガイア。待て!」
    「おいっこらっ私は狩りの獲物では無いぞ!やめろっナタ!ハハハハハッ!」
     二人の笑い声が草原に響き渡り、そのせいなのか、その日の狩りは獲物が全く取れなかった。
     そのことを思い出していた私の頬に涙が伝った。
     懐かしい思い出になるはずだった。思い出し、目を細め微笑み、暖かい風が心をよぎる思い出になるはずだった。私の願いがかなったと、妹を幸せにできたと喜べる思い出になるはずだった。
     それを、人間が壊した。
     私の些細な願いをどうして人間が壊せる権利があるのだ。
     私達は国を乗っ取ろうなどと考えたことなどなかった。いつか、いつか幸せに、平和に暮らせることだけを願っていた。
     その為に、いままで使えてきたというのに……。何故このような仕打ちをされなければならないのだろう。何故こんなにも私を傷付けることが出来るのだろう。
     何故私はこれほど人間を憎めるのだろう。
     いつから私の心には、こんなにも醜い心が宿ったのだろう。これから私はどうすればよいのだ。民達を、家族を無くした私はどうすればいいのだ。
     ただ、生きていけばいいのか?
     この憎しみと一緒に時を待てと言うのか?どうすれば、よいのだ……!?
     ……このままではいけない。このまま感情に流されてはいけない。
     私は王だ。アース一族の王だ。
     王は常に冷静でなければ…。たった一人になってしまったけれど、私の中には皆がいる。
     だが思い出すのは皆のことばかり。そして、幼い日の思い出も…。
     ルナが生まれた日のこと。
     ナタとケンカをし、母上に叱られたこと。
     幼い頃から、一族の民が一人死ぬ度泣きじゃくるルナを抱き締め慰め、自分は夜になると寝床で声を押し殺し泣いていた。
     狩りから帰ってきた父上を迎えに出ると、父上は笑って私を抱き上げいつも同じ言葉を言う。
    「はやく大きくなれ、成人になったらこの父王を助け、力を貸してくれ」
     そして私は決まってこう聞く。
    「成人したら父上と一緒に狩りに行ける?」
    「行けるさ。それに今以上に母上やルナを守ってやることができる。母上やルナだけではない、一族の民皆を守ることが出来よう。お前は不思議な力を持っている。今はまだその力が目覚めていないが、もしかしたら、この父王を越えられるかもしれぬ」
     そう言って笑う父上の顔。脳裏に一人一人の民達の顔が浮かび上がっては消えていく。
     冷静になれ。人間を憎み一人で生きていけ。 表情を表にだすな。氷の仮面を付けろ。
     ……だが今は、泣かせてくれ。朝になったらもう絶対涙は流さない。人前で弱い所など見せたりはしない。だから…。
     だから今は、木々の鼓動を聞き、心を静めさせてくれ。身体中の涙を今、すべて流させてくれ。
     明日になれば、きっと大丈夫だから。
     そのまま私は、小さな子供のように、泣き疲れて眠ってしまった。
     …私は許さない。私の目の前で家族が、民達が殺された時の憎しみを…!
    September 02

    6. 愛児 (ルナ)

     涙を流しながら、私はその場から消えた。 許さない……許さない!
     人間よ、何故私の一族を殺した!
     我ら一族を殺すということは神をも傷付けることだと何故分からぬ!
     何故戦をする!
     何故むやみに血を流す!何故……!
     
     その夜、私は五つ山を越えた森の中にいた。 この森までテレポートしてきた瞬間、急に眩暈と吐き気とともに激しい激痛が身体中を襲った。
    「くっ、ああっ!……くそっさっきの矢に毒が…!?」
     私は激痛に耐えながら、這うように森の中を歩き毒消しの薬草を捜し、飲み込むように口の中に押し込み、森の中で一番大きな木を見付け、大きく枝を広げている一つを今夜の宿にした。
    「我が……アース一族の力を持つ私にこんな物が……通用するものか!…私は生き抜いて見せる!こんな所で……死んでたまるか!私に毒など……不死となった私に毒など通用するものか!」
     生き抜いて見せる!絶対に……!
     そして私は、そのまま気を失っていった。 気が付くと薬草を飲み込み、深い眠りに入っていくのを繰り返し、身体から毒が完全に消えたのは、二日後のことだった……。
     枝によしかかり、父上から貰ったばかりの青いマントで身体を包み暖めた。装身具に慣れていない私はサークレットとイヤーカフが触れている部分がジンジンと痛みはじめていた。
     ……直に慣れる。痛みなど感じなくなる……。心の痛みも………。
     自分の膝を包み込むように身体を縮めマントに顔を埋めた。
     父上……!母上……!
     脳裏に両親の死ぬ直前の、激痛に顔を歪めた顔が焼き付いている。
     様々な思い出が私の脳裏をよぎっていった。あれは、いつの頃だったろう…?
     あれは、昨年の、暖かい柔らかな風のある春の夜。私は眠れない為、外に出て美しい月を石段に腰掛け見ていた。どのくらい経ったのか、ふいに後ろから呼ばれた。
    「……兄さま…?」
     振り向くと、妹姫のルナがいた。
    「ルナ、どうした。眠れぬのか?」
    「うん……。兄さま、相談があるの」
     そう言ってルナは私の隣に座った。
    「なんだ?」
    「私、ナタに……プロポーズされたの」
    「ナタに!?」
    「うん……」
    「それで何て答えたのだ?」
    「考えさせてもらいたいって。とても嬉しいけど、少し、考えたいって………」
    「そう、か」
    「兄さまは、どうしたらいいと思う?」
    「……私の意見を言う前に聞いておくが、ルナ、お前の中では答えは出ているのか?」
     するとルナは頬を赤くしコクンと頷いた。
    「……ナタの親友として言えば、あいつほどお前を深く愛している者はいないだろう。ナタは真面目だし、一途だ。きっとお前を幸せにしてくれるだろう。兄として言えば、まあ、すこしナタに妬けるが、これほど美しい我が妹を妻に迎えるのなら、文句は言わせない。お前達だけでも、幸せになれ」
    「じゃあ、兄さまは、賛成なの?」
    「もちろん。反対する理由がどこにある」
    「ありがとう!兄さま」
    「父上や母上には言ったのか?」
    「ううん、まだ。なんだか恥ずかしくて。それに反対されたらどうしようかと思って」
    「ってことはお前はナタのプロポーズを受けるんだな?」
    「うん……」
    「大丈夫。父上達だって賛成してくださるさ安心しろ」
    「兄さま、お前達だけでもって、どうゆうこと?兄さまは、お好きな方、いらっしゃらないの?」
    「……今年の秋で二十五にもなるのに、おかしいだろう?でも何故か、この人を守りたいという気持ちを持つような人にはまだ会っていない。一時期、私はどこかおかしいのではないかと思ったこともあるが、いまはこれでいいと思っている」
    「何故?」
    「私はアース一族の王子だ。将来、民達を守る立場だ。我らが忠誠を誓ったあの方、国王には、我らの力が必要だ。我らをいつまでもここに繋ぎ止めるためには、何が一番いいと思う?」
    「?……さあ…何かしら…」
    September 01

    6. 愛児 (王位継承)

     私が生まれた時代は遥か昔、人々が自分の権力のために醜い争いを繰り返ししていた頃。
     その戦の裏で活躍していたのが、誰もが恐れ、かつては神の力を持つと信じられ崇拝されていたアース一族。
     私は銀色の髪と深い蒼の瞳を持ち、そのアース一族の王子として、この世に生まれた。
     一族の産婆が、生まれたばかりの私の顔を見るなり、泣き叫んだという。
    「この子が不憫だ。この子の未来があまりにも辛すぎる。なぜ神はこの子にそのような運命を持たせたのか」
     と……。
     その産婆は、私の両親にも、誰にも、何も言おうとせずに、そのまま他界したという。産婆は、予知能力者だった。
     アース一族は一人一人違う能力を持ちこの世に生まれ落ちていた。
     一族と言っても、皆、血の繋がりがあるわけではない。種族、同族と言ったほうがいいのだろうか……。
     ある者は我らを神の子と呼び、ある者は神を守る騎士団とも呼んだ。
     我ら一族はそれぞれが持つ力に誇りを持ちけしておごらず、静かに暮らしていた。
     我ら一族は、神とは地球と信じていた。地球には意思が有り、時には強く、時には優しいまなざしで我らを見守って下さっていると。そして唯一神、地球の声が聞こえるのはアース一族の王のみであると。人々がまだ地球が丸い惑星と気付く前から、我らは知っていた地球から聞き、月の力を通し外、宇宙からの地球を何代か前の王が見ていたから。
     地球の深い蒼さを知り、誰よりも地球を愛している者達。それがアース一族だった。そして次期王位後継者として生まれたのが私だった。
     産婆が泣き叫び、私の未来が悲運だと言われた為に、私の両親は、その産婆の言葉を気にしてか、私に神の名を付けた。両親が私に付けた名はガイア。神と同じ名。地球という意味だった。神のご慈悲があるようにと、平和に、寿命を全うしてほしいと。
     その時代が乱世だったが故に、両親は私に平和に生きてほしかったのだろう。
     
     私が五才の時、流行り病の為、大勢の一族が死に、数が激減していた。昨日元気だった友が何日か高熱を出したかと思うとあっけなく死んでしまったり。
     死んでいく者達は家族に自分の持つ力を渡し、自分達の分も生きてほしいと未来を託していった。
     一族の王は数少ない一族を守るため、一国の王に忠誠を誓い、聖なる力を汚すと知りつつ、戦をし国王を守り国を繁栄させていた。
     ところが国王は、その力が恐ろしくなったのだろう、一族を滅ぼそうとした。
     戦の為疲れていた一族は気付くのが遅かった。予知能力を持つ者が危機を感じた時、国王は隣国と同盟を組んだ時だった。
     国王に失望した一族は山中に逃げ込みひっそりと暮らすことに決めたが、その願いは叶わなかった。
    「王、王よ…同盟がすぐ近くまで来ている…」
    「王……」
     長年の戦のため、病気がちになってしまった王。
     王は民達を見て言った。
    「我らは滅びてはならぬ、我らが滅びれば、誰が地球を守るのだ……?皆が逃げられぬのなら……最後の手段しか……」
     一人が言った。
    「王よ、ナユタ王よ、我らは一つ、考えは一つ。王と同じ気持ちです」
     次々に民達は頷いた。
     頷きながらも、赤ん坊を抱いた若い母が呟いた。
    「なぜ…?私達一族は彼らの為に戦ってきたというのに、忠誠を誓った方が中心となり私達を滅ぼそうとしている。私達が何をしたと言うの…私達は自分の命を盾にしてあの方を守ってきた、なのに……ああ、恨めしい…だけど、私達はもう戦えない………」
     そして皆が泣いた。男も女子供も。
     自分達が惨めで。
     同盟が憎くて。
     この世が悲しくて。
     戦をする者達が、その家族が可哀相で。
     王が言った。
    「王子、お前の名は地球という意味なのだよ……我ら一族は皆、戦で疲れた。このままでは一族は滅びるだろう。そんなことになってはこの地球を守る者がいなくなってしまう。王子、お前に私達の力全てをやろう」
     泣いていた民達が顔を上げ私を見て言った。
    「王子、どうか一族の血を守って下さい」
     しかし私は承知しなかった。
    「なぜ私だけが生きられようか。どうしたら皆を見捨てられる?私は嫌だ、私だけが生き延びるなど、私には出来ぬ」
     黙っていた王妃が言った。
    「ガイア、よく聞いてちょうだい。私達は皆同盟の者達に狙われているわ。私達は戦で力を使い過ぎて逃げ切る力がもうないの。でも、残っている力を一つにし、それを一人に授けることで大きすぎる力とのバランスのため年を取ることがなくなるの。一人生きるだけで私達一族皆が生きていることになる。貴方の前から私達がいなくなっても貴方に力があるかぎり私達は貴方の中で生きていられるのよ」
    「では私でなくてももっと他の者に」
    「貴方も知っている通り、地球にはいつか危機がくるわ。残念ながらその危機がいつ来るのか分からない……。たぶん何百年も先のことでしょう。その長い年月を不死なのだと気付かれぬように、一人で生きなければならない。たった一人で生きていくのはとても辛いことです。不死になる者にはこれに絶えられる精神力と一族皆を愛する心が強くなくてはならない。これらの条件を満たしているのは貴方だけなのです。私達を愛しているのなら、私達の願いを聞いてちょうだい」
    「ですが母上、私には出来ません。妹姫のルナはナタとの婚儀が近い。我が一族の歌姫でもあるメイアの胎内には新しい命が芽生えている。もうすぐ一族に新しい命が生まれる。そんな者達を、王子である私に見捨てろというのですか?」
    「兄さま、これは民達の願いよ。私達は兄さまの中で生きていられる。だから、お願い」
    「ルナ……」
    「王子!」
    「皆……分かりました。父上、地球を守る役目、私が…!」
     皆の力を渡され、父王から王の証しである青いマントに銀のサークレット、ブレスレット、そしてイヤーカフを受け取り、私は若き王になった。
     王妃が言った。
    「ガイア、私達を助けようなどとは考えてはいけませんよ。貴方の中には常に私達がいるのだから。私達を愛しなさい、貴方に授けた皆の愛をいたわりなさい。そして、憎みなさい。貴方の前から貴方が愛した私達がいなくなってしまった元凶を、同盟を組んだ人間を憎みなさい。いつか…いつか貴方は人間を愛すでしょう、しかしそれが運命なのです。若き王、私達は神の子です。地球を守るようにと私達一族に力を授けてくださった。私達はその力を間違って使ってしまっていた……」
    「………!」
     誰かが叫んだのが聞こえた。
     瞬間、私の親友であり妹ルナの婚約者でもあるナタが私の前に立ちはだかった。
    「ナタ?」
     そう言おうとした瞬間、ナタの身体に多数の矢が降り注いだ。
     悲鳴を上げたのはルナだった。
    「きゃああ!ナタ!」
     次々に矢が一族めがけて降り注いだ。
    「王子、いや、若き王よ!私は一人の父として息子であるお前に最後の頼みだ!同盟を憎め!そして…そして我ら一族を愛してくれ……!」
     直後、父王の身体から血が吹き出した。
    「父上ー!」
    「あなたー!]
    「ゆけ…王よ…愛しい子よ…地……球を守って……」
    「行きなさい王よ、父の最後の言葉を守りなさい!私も空の上から…はうっ!」
     王妃の身体に矢が尽き刺さった。
    「母上ー!」
    「見ているわ……ここで。だから…だから早く逃げ…て……」
     王妃は父王の側に倒れた。もう、ピクリとも動かなかった。
     辺りを見回すと、誰も、生きている者がいなかった。ルナはナタを庇うように背に矢を受け死んでいる。
     メイアの夫はメイアを庇い息絶えており、メイアの腹と胸には、深々と無数の矢が。
    「……メイっ……っつ!」
     一本の矢が、私の左腕を掠った。
     上を見上げると、矢が一族目掛け無数に、まるで雨のように降り注いでいた。
    「父上、母上………ナタ、ルナ…皆……!うぁぁぁぁぁっっっっ!!」
    August 31

    6. 愛児 (その想い)

     ガイアは空を飛び富士山火口の真上にいた。
     今までの噴火と違って、物凄い勢いで溶岩と噴煙を吐き出していた。
     普通の人間ならばすでにこの熱さで死んでいるな。
     首から三つのロケットを外し蓋をあけ昔最長老殿に教わった呪文を唱え言った。
    「今、ガイア・コスティルの名において術を解き放す!」
     瞬間、物凄い量の溶岩と噴煙を吐き出た。
    「な、に!?何故術が解かれない!?うわっ」
     熱風が俺を襲った。強風にルスカのロケットが飛ばされた。
    「しまった!」
     あわてて腕を延ばしロケットを掴んだ。
    「どうやら、無事の様だな…何だ、これ?」
     ルスカのロケットに入っていたガイアの絵の下に、何かが入っていた。
    「……?」
     絵を取ると、その下にもう一枚の絵が入っていたのだ。その絵の人物は、日の光を浴びて楽しそうに笑っている。
    「セイラ…」
     …ルスカは、セイラを想っていたのか。
     そう言えば、ルスカはいつもセイラを見ていたような気がする。
     ルスカは、セイラより一つ年上で、セイラとは、セイラが生まれた時から知っていて、そしてこの永い年月をナタを育てながら生きていたのだから、たぶん、セイラの優しさや意思の強さ、そして草木の心を知る力を持ち草木を誰よりも愛しているセイラの魅力を一番知っていた者。
     …セイラの心が私に向いていたのを知っていながらも、セイラを想う心。
     ということは。再び呪文を唱え言った。
    「今、セイラとガイア・コスティル、二人の名において術を解き放す」
     そう言い、ロケットを火口に投げた。すると、噴煙が静まり流れ出していた溶岩が止まった様に見えた。しかし、ゴゴゴゴッという音とともに大きな地震が起きた。そしてその地震は全世界に広まった。
     ビルを初めとする家屋が崩れ、下敷きになった人々が続出し、地震によって起きた津波にのまれた者も続出した。
     大地の揺れに誘われるように再び全世界の火山が物凄い勢いで噴火した。
     人々は逃げ惑い泣き叫び、また死を覚悟する者までいた。
     ガイアは富士山火口に向かって飛び込んだ。一瞬で身体が焼ける程の熱さに耐え、そして叫んだ。
    「私はアース一族の末裔であり王族・コスティル家の末裔でもある者!話しがしたい、地球よ、その眼を開き私の前に!」
     瞬間、物凄い熱風が襲ってきた。マントで身体を庇い、熱風が去るのを待った。
     その時、怒りが混じった重々しい声が、何処からともなく聞こえてきた。
    『嘘をつくな!アース一族は、私の愛児はとうの昔に滅んだ!』
     …!この声は地球か!?
    「違う!私だけが皆の力を与えられ今日まで生きてきたのです!」
    『まだ言うか!』
     再び熱風が襲う。
    「ぐわっ!…違う!私はアース一族の末裔である者!地球よ、どうか怒りを静めてください!」
    『何十年か前、アース一族の者達と似たような力を持つ三人が私に会いにきた。自分達の村は人間達によって滅ぼされた、力を持つ者は自分達しか残っていない、この私を守る者は自分達だけだと!私は彼らを愛した。最後の愛児として。なのに、彼らまでもが死んでしまった。死ぬ直前の声を私は聞いた。そして見た!彼らの最後に見た者。銀色の髪に蒼い瞳の者。お前が私の最後の愛児を殺した者だろう!愛児だけではなく、私の命までも欲しいのか!欲しいのならくれてやろう。人間ども諸共滅んでやろうぞ!』
    「いけない!地球よ、そんなことを考えてはいけない!」
    『黙れ!!』
     見えない刃と熱風がガイアを襲った。
    「うわっ」
     物凄い熱さの中で思うように動けないガイアに容赦なく襲ってくる刃は、皮膚を裂くように止まることなく襲ってくる。
     白い短衣が見る見る内に血で紅く染まってゆく。
     それでもまだ尚攻撃は続いた。大小様々な岩が襲ってき、俺の身体にうちつけられた。
     …ボキッ!鈍い音と激痛が襲った。拳二つ分くらいの岩がガイアの肋骨に当たったのだ。
     …折れた…?そう思った瞬間、ゴフッと大量の血を吐いた。
     肺をやられた!
     それでも攻撃は続く。
    「…とお、い…遥か彼方の願い事」
     ピタリッと攻撃が止まった。
     ガイアは歌いだした。一族の子守歌を。
    『…その唄は』
     歌い終えたガイアは、肋骨の激痛に耐えながら、
    「我が、アース一族の子守歌です。貴方を愛し称え、貴方を励ます為の唄です」
    『嘘だ…私の愛児は、滅んだ…』
    「私だけが生き残ったのです。地球よ、その眼を開き、私を見てください!」
     瞬間、物凄い熱風が襲ってきた。マントで身体を庇い、熱風がさるのを待った。
     熱風が去り、穏やかな風が身体を包んだ。その風はまるで意思があるようにサークレットやバングル、イヤーカフに触れた。
     風が止み、目の前が真っ暗になり何かが身体を優しく包み込んだ。抵抗しようとしたがその何かから、とても優しい感情が感じられ抵抗を止め目を閉じた。
     …様々な思い出が蘇ってくる。
    August 30

    6. 愛児 (王)

     薫を下ろした途端、ガイアはいきなり口元を押さえた。
    「ぐっ!ごほっ」
     床にポタリッと指の間から赤い血が数敵落ちた。
    「がぁ兄ちゃん!?」
    「ガイア!」
     言葉を遮るように、口元の血を拭い、
    「さようなら…皆」
     その場からガイアはテレポートをして消えた。
     
     富士山には沢山のテレビ局の関係者が大勢おり、警察は彼らを避難させようと必死でいた。放送中のワイドショーのリポーターが興奮した様子で今の現状を説明している。
    『いまも尚、噴火がおさまらないここ、富士山では、すでに住民は避難しております。世界の火山数箇所はすでに噴火が止まっており、噴火の範囲を円とすると、その中心にある火山には謎の青年が現れ噴火が止まっています。現在も活動している火山の中央は、富士山です。こちらの現場にも謎の青年が現れるのではないかと、マスコミが殺到しています。残る一部の噴火している火山ふもとに住む住民達にとって彼はメシア的存在になっているのではないでしょうか。謎の青年の特徴は銀の髪に蒼い瞳で…少々お待ち下さい。この先で誰かが火山めがけ歩き出した所を止められたらしく、何やら警察関係者と思われる人達と話している人がいます』
     
    「一体どうゆうことなんだガイア君!何故君がここに?フィリピンの映像を見ていて、テレビで君によく似た青年が映っていたから、まさかとは思い、ここに来てみたが…。いいや、それよりも前に聞きたい。君は何か知っているのではないのか?マスコミはまるで君が噴火を止めたかのように言っている。そんなこと、人間に出来るわけもないのに」
    「…人間ではないから、出来るんですよ」
    「え?」
     ガイアの回りを報道陣が囲んだ。
    『あの、各地の火山に現たのは貴方ですよね?貴方は一体何者ですか?
    噴火を止めたのは貴方ですか!?』
    「…どけ」
    『貴方は全世界でメシアと言われておりますが、メシアとして全世界の火山が突然噴火した原因はお分かりなんですか?』
    「時間がないのだ、どけ」
    『噴火の原因は!?』
    「どけと言ったのが聞こえないのか!…原因だと?原因はお前達人間のせいだろう!お前達がむやみに森を切り、海を汚し、動物を殺したせいだろう!だから地球が怒りだし、この世に使者を送ったのだ。…しかしその使者達は地球をこんなふうにしてしまった人間達を惨殺してしまったのだ」
    『で…では最近立て続けに起こっていた連続惨殺殺人事件が?』
    「…そうだ。彼らは…人間達を殺しながら、私を頼って探していた。やっと私を見付けた時、私には人間の恋人がいた。それもあって、彼らはこんな愚かなことを!結局は地球を滅ぼしてしまう結果になってしまったが…地球を愛していたのだ。これは私のせいだ。だから、…だから私が地球を静める」
    『貴方は初めからこうなることを知っていたのですか?』
    「いや、知らなかった。知ったのは、第二の大規模な噴火が起こった時だ。時間がない。これで失礼する」
    『もう一つだけ答えて下さい。なぜ貴方は噴火を静められる不思議な力を持っているのですか、貴方は一体?』
    「…その昔、神の力を持つ一族、アース一族がいた。彼らは醜い心を持った人間達に殺された。一人を残して…。私は、その生き残りであり、王であるガイア・コスティルなのだ。この名が有る限り、私は人間を憎み続けるべきだったのかも知れない。そうすれば、…沙羅は死なずに済んだのに」
     ガイアは手を天高く上げた。すると指先から金色の帯が現れ身体を包みこんだ。金の帯はクルクルと回りながら消えていった。
     その場にいた者も、テレビの前でこの光景を見ていた皆が驚いた。
     ガイアの髪が肩と腰の間あたりまで伸びており、その髪は一つに束ねられていた。
     体格も少しガッチリしており、瞳には、凛とした気配が漂っていた。
     白い短衣に真っ青なたっぷりとしたマントをはおり、額には一族の象徴である太陽と三日月と地球の透かし細工が施してある銀のサークレットとそれに対になるバングルが左右の手首に、そして院長に渡したはずのイヤーカフが左右の耳にあった。
     それは、ガイアが王になった二十五才の姿だった。
     セイラ達の三つのロケットを首に掛け、富士山目掛け歩きだした。あわてて刑事が叫ぶ。
    「待ちたまえ、ガイア君!!
     その言葉を振り払うように、ガイアは消えた…。
     我に帰ったリポーターが、
    『謎の青年が今、富士山へと歩き出しました。我々の目の前で金色の帯に包まれた途端衣服が変わり、古代ローマを思わせる姿となりました。彼は昔、人間に滅ぼされたアース一族の生き残りであり、王であると言いました。一体彼は何者なんでしょうか?一端スタジオにお返しします』
    「…はい、現地からのリポートでした。謎の青年は一体」
     ゲストコメンターとして来ていた考古学博士は司会者の言葉を遮り呟いた。
    「神の愛児・アース一族…」
     司会者は聞き返した。
    「え?何ですか?」
    「神が悲鳴を上げたとき愛児現れたり…。地球の愛児、それはアース一族…。太陽、月、そして地球を愛し守る者。地球の名を持つその者、真の勇者なり」
    「それは?」
    「私が昔海外を無銭旅行していたときに聞いた言い伝えです。昔、その地には不思議な力を持っていた一族がいて、国の為に力を使って戦をし、国王を守っていた。ところが国王はその一族を恐れ一族を滅ぼしたそうです。その国は今はもうなく、その土地に言い伝えだけが残ったのです。その手の言い伝えは何処にでもあるのですが何故か心にひっかかっていたんですが…まさか言い伝えが本当だったとは……」
    「そんな非科学的なことが」
    「では、貴方はさっき彼がテレビの前で変身したのはトリックだと言うんですか?彼のサークレットには言い伝えの言葉と同じに太陽と月、そして地球が刻まれていた。それに気が付きませんか?先ほど警察関係者の方が叫んだ彼の名前。彼の名は、…ガイアとは、地球と言う意味ですよ。彼が本当に言い伝えの勇者なら、地球を救ってくれるでしょう」
     その言葉に誰もが息を飲み、言葉が出なかった。
     スタジオの静けさが視聴者にも伝わり、そして祈ったのだ。
    『地球を救って』と…。
    August 29

    6. 愛児 (詩~ウタ)

     過去の人間であり、昔一族が人間達に殺され、ガイアだけが民達の力によって不死になったことも。
     沙羅を殺したのは二人組ではなく三人だったということ、彼らも自分同様不思議な力を持ち、そのせいで村人が殺されたことを。
    「彼らは、彼ら同様人間ではない俺を頼って俺を探していました。ところが俺は人間を愛していた。そして、憎しみの為、沙羅を殺してしまったんです。…彼らは自分達が死ぬ度に世界各地の火山が噴火するように、地球に細工をしたのです。このまま放っておいたら地球は滅びる。それを救えるのは、俺だけなんです。富士山の噴火を止めれば世界各地の噴火は止まります」
     ガイアは二つのイヤーカフを外しそれを院長に渡した。
     それは銀で出来ており、太陽、月、地球の見事な浮き彫りが施されている物だった。
    「これは?」
    「サラと一緒の墓に入れてほしいんです。これが俺の持っている物で唯一残る物だから」
     ニッコリと笑って薫を見た。
    「薫、兄ちゃんが教えた唄、覚えている?」
    「うん、覚えているよ」
    「忘れるなよ、この唄。とても古くて神聖な子守歌なんだ。人間がこの世界は丸い星なのだと気付く前から伝わる子守歌で、もしかしたら、…地球と話しが出来るかも」
    「本当に聞こえる?」
    「聞こえるよ。心が清らかで誰よりも地球を愛している者ならね」
     薫を抱き上げ、薫の知らない異国の言葉で歌い出した。

     遠い、遥か彼方の願い事
      天と地と、水の神が生まれた日
       神の愛児(まなしご)生まれたり
        力を合わせ、守っておくれ私達を

     どんなに願い、待ち侘びたか
      涙を流し待ち続ける永い時間(とき)よ

     誰か、伝えておくれ願い事
      神々は、人々をも愛してる
       どんなに傷付けられても
        愛児達が守ってくれる

     信じ続けた、私の子供達
      なのに何故私に涙を流させる

     私達が、助けを求める願い事
      愛児達よお前達を信じてる
       この街を国を空を海を星を
        守っておくれ愛児達よ

     いつか、子供達も気付くだろう
      気付いてくれるその日まで

     唄を、歌っておくれ願い事
      私の為に、唄を歌っておくれ
       どんなに傷付けられ辛くとも
        愛児達が歌ってくれるから

     子供達が私や愛児達に気付いてくれる
      その日を私は信じよう
                 #

    August 28

    6. 愛児 (火山)

     ガイアは二三才の姿になり、フィリピンにある活発な噴火を続けている火山の麓にいた。
     そこには警察をはじめテレビ局の人間が大勢いた。どうやら富士山の噴火のニュースが流れてきたらしい。
     セイラが死に、地球上全ての火山が活動し始めていた。破滅の道を歩き始めている…。
     ガイアは三つのロケットを見つめ握り締めると火山へと歩きだした。
    「おい君!危ないぞ、ここから先は立ち入り禁止だ」
     構わず歩き、警官に止められた。
    「…放せ」
     警官を突き飛ばしたガイアは大勢の警官に囲まれた。
     テレビ局のカメラが一斉にまわりだし、ガイアの姿が世界中に映った。

    「がぁ兄ちゃんだ」
    「本当だ」
    「どうしてお兄ちゃんがあんなところにいるのかな?」
    「確かにお兄ちゃんだけど…お兄ちゃんパスポートっていう物持ってたのかな?」
    「なぁに?そのぱすぽーとって?」
    「外国に行く為に必要な物よ。…でも、お兄ちゃんは入院しているんじゃ?私確かめてみる」
    「どうやって?」
    「病院には院長先生がいるはずよ。電話して聞いてみる」
    「もし、テレビに映っている人がお兄ちゃんだとしたら、いつの間にフィリピンに行ったんだろ、お兄ちゃんが病院に担ぎ込まれてからまだ五時間。二時間前に院長先生から電話が来たときはまだお兄ちゃんは病院にいた筈なんだから…。この短時間にフィリピンまで行けるのかな?」
     セントポーリア孤児院でテレビを見ていた孤児達は呑気にそんなことを言っていた。
     
    「放せ…放せー!」
     警官達を突き飛ばしたガイアはかまわず歩きだし、その場にいた人々は皆、彼は自殺したのだろうと囁きはじめた。
     三十分ほど経ったとき、世界中にあるニュースが流れた。
    『突然噴火が止まりました!フィリピンの火山が、噴火が止まりました。三十分程前、謎の青年が、警官が止めるのも聞かず火山へ歩いていったことと何か関係があるのでしょうか?……只今入ったニュースです。フィリピンの火山とほぼ同時刻に噴火した世界数箇所の火山が一斉に噴火が止まりました。…これが火山めがけ歩いていった青年のVTR映像です。一時、全世界の休火山が全て噴火した時、誰もが世界の滅亡を予感したことでしょう。しかし、噴火は治まりつつあるようです。世界は救われるのでしょうか!?』
     次々に世界からニュースが入ってくる。大規模な噴火を続けていたアメリカの火山にも謎の青年と同一人物と思われる銀髪の男の姿が確認され、それから間もなく噴火が止まっていた。
     次に誰もが予想した謎の青年が現れる場所は…日本の富士山。
     
     ガイアはアパートにいた。沙羅との思い出をもう一度脳裏に焼き付けるために。
     机の上のフォトフレームに、沙羅と二人で写っている写真と、孤児院の前で皆と写した写真があった。
    「沙羅…。きっと俺は、もうすぐ死ぬ。噴火が止まった時、地球の危機が救われる。俺の身体は朽ち果て、セイラ達のように灰となり消えるだろう。死は、…死は怖くはない。沙羅が死んだ今、生きている方が、辛い」
     テレビから流れているニュースが聞こえた。『北海道に津波が起きました!日本海からの大津波が海沿いの町村を襲い被害が続出しております』
     ガイアは写真を持ってテレポートし、セントポーリア孤児院に行った。
     ドアを開け、部屋に入っていくと、院長をはじめ孤児達が集まっていた。
     ガイアを見た院長は、
    「何処へ行っていたのだガイア、心配していたのだぞ。子供達が病院に電話をかけてきてお前がテレビに写っていたと言うから慌てて帰ってきたら、一体どうなっているのだ」
    「ねぇねぇ、がぁ兄ちゃん、何とかっていうふんかしてた山に行っていた?」
    「どうしてさ、薫?」
    「がぁ兄ちゃんの姿がね、テレビで映っていたの」
    「そっか。院長先生、俺、もう行きます」
    「行くって…何処へ?」
    「後でここに刑事さん達が来るかもしれないから、刑事さん達にも伝えて下さい。……沙羅を殺した犯人は俺が殺しました。彼らは人間ではなかった。人間だったのに、人間を憎んでしまって…」
     そしてガイアは、すべてを話した。
    August 27

    5. 激突 (セイラ)

    振り向いたガイアの瞳に飛び込んできたものは、短刀を自分の胸に突き刺していたセイラの姿だった。
    「セイラ!」
     駆け寄りセイラを抱き上げた。
    「何てことを!ナタの言葉を忘れたのか!」
    「…これで、よかったのかも……しれません」
    「話すな!傷がひろがる!」
     セイラは首を振り、続けた。
    「私達は永く生きすぎた。理由もなく、只この力を絶やしたくないために…ガイア様…私が死んだら初めに日本の富士山が噴火します」
    「富士山が!?」
     セイラは弱々しく頷き話しを続けた。
    「噴火した振動で日本各地に地震が起こり、津波がおきます。しかも、かなり大きな津波が。その波動が世界各地に広がり、各地で被害が続出するでしょう…。私達は人間が憎かった。憎くて、憎しみの感情に飲み込まれてしまうほどだった。私達の夢は…幸せに、この村で生きること…。どんなに願っても、かなえられない夢。せめて…せめてこの地で死ねるのが、何よりの幸せ。…ガイア様、私のロケットを持っていって下さいな。必要でしょう?このロケット」
    「セイラ…」
    「早く、早くテレポートで…私は自分が消えていく姿を見られたくありません。…早く!」
    「…最後に、何かして欲しいことは?」
     セイラはか細い、震えた声で言った。
    「……キスして」
     ガイアは優しく抱き寄せ、セイラの額に自分の唇を押し当てた。
     セイラは一筋、涙を流し、
    「ありがとう」
     と、呟いた。
     セイラを寝かせ、ロケットを外し、そして拳を強く握り、
    「さらばだ、セイラ!」
     背をむけテレポートし、この地を離れた。
    「さようなら、ガイア様。私の…愛しい、ひ……と…」
     …風が吹き、セイラの身体が消えた。
     
     
     私はただ、貴方様に振り向いてほしかっただけ。貴方様に愛されたくて、捜していた。
     貴方様に会いたくて、ずっと捜していた。
     ずっと、愛していた………。
     貴方様の側にいられるのは、自分だけだと思っていた。同じ力を持つ自分だけだと。
     私たちをその手にかけたのは、私たちが貴方様の愛しい者を殺したという理由だけではない事は分かっています。
     私たちを、止めたかったのでしょう?戻る事の出来ない道を歩いてしまった私たちを止めるには、その命ごと止めるしかないと…。
     私も、ルスカもナタも心の奥底では分かっていました。
     この力を悪魔の力にしてしまったのは自分たちだと…。でもあの憎悪を忘れ、ただ理由もなく生き続ける意味が分からなかった。人間として生きる事のできない身体を持ち、憎悪だけを抱き、発狂しそうなこの苦しみを忘れるためには、人間に復讐する事でしか道はなかった。
     どこにいるのか分からない貴方様を捜し続け、すがりつきたかった。
    『私たちを止めて欲しいと…』
     でも結局は、私達は貴方様の命を奪う元凶になってしまった。それでも貴方様はお優しい方だから、私達を許してくれるのね…。
     貴方様に振り向いてほしかった。この想いを受け入れてほしかった。でもこの想いももう満たされた。
     貴方様が私にキスしてくれたから、それだけで私は幸せだから…。
     さようなら。愛しいお方、ガイア様…。
     
     悪魔の地が今、呪いと言う名の壁を砕き、哀しみの、哀史の、哀悼の地へと変った。
     地球の悲鳴が聞こえる。
     ガイアと地球の波長がシンクロし、激しく心を揺さぶる。
     あまりの激しさに胸を押さえて蹲ってしまいそうだ。
     今、貴方を助けます。貴方を助けて、私は眠りに入る。やっと、深い眠りに入れる……。
    August 26

    5. 激突 (悲鳴)

     ゴゴゴゴッと地面が揺れ、遥かむこうの山々を見た。
    「何か……くる?」
     ドォ…ンッという大きな振動がガイアとセイラを襲った。
    「なっ!」
     遠くの空に噴煙と火柱が幾つも上がっていた。ガイア達がいる地にまで熱い溶岩の塊が落ちてきた。
     セイラを見ると驚いた様子もなく、その場に立ちつくしていた。
    「セイラ?…まさか、この噴火はお前がっ…」
    「………正確には、私達が、ですけど」
    「何をした?地球に何をした!」
    「……」
    「答えろセイラ!」
    「簡単に言えば、地球に軽い催眠術をかけたのです。その催眠術は私達三人に分けてあり、一人死ぬたび、地球上の火山を三つに分け、山々が次々に噴火するようにしてあるのです。大量の火山灰が街を、いいえ国をおおい、さらに噴火の振動によって津波が起こり、私が死ねば」
    「世界が滅ぶ…。何てことを!」
    「滅びればいいのよこんな世界!人間達が世界を支配して、動物達を簡単に殺し、森を切り、海を汚して!罪のない村人達を殺して英雄気取りで威張っている人間を殺して何が悪いの!」
    「人間を殺せば気が済むのか!?違うだろう?私を捜していた理由はそんな為ではないだろう!?」
     セイラの肩を掴み大きく揺さぶった。セイラは顔をそむけ、
    「では、どうしろと言うのです…?こうでもしなければ…私達は、生きていた証拠すら残らない……」
    「催眠術を解く方法は?」
    「……教えるワケにはいきません」
    「セイラ!」
     セイラはガイアの手を振りほどき再び閃光を撃った。
     軽くかわし、掌に力を溜め、
    「三人あわせても私に及ばぬ力しかないのにたった一人の力で私に対抗する気か!」
     セイラめがけて撃った閃光は見事にあたった。
    「キャアアアアア!」
     セイラの動きが封じられた。再び光の剣を握りしめた。
     剣を右手で握り締め、セイラの胸目掛け剣を振り上げた。が、途中で剣を消し、セイラの動きを自由にした。
     セイラは汗を拭い、
    「なぜ……とどめを!」
    「私より弱い者を殺したくはない…。沙羅を殺したのはあの二人だ。セイラ、お前は何処へとでも行くがいい。私は地球を静めに行く」
    「催眠術を解く方法も知らないのにどうやって」
     ルスカとナタのロケットを出した。
    「この村には特殊な呪文があるのを知っている。その呪文はロケットに封じることによって破れることがなく、ロケットを開け中に入っている人物の名を呼ぶことによって呪文が解けるということは既に知っている」
    「!…何処でそれを!?」
    「……昔、最長老殿から聞いた」
    「…でも、私が死んだ場合、術を解くだけでは噴火は治まりませんわ」
    「お前が死なぬ限りそれはないだろう?もしもお前が死に、術を解いただけでは止まらぬのなら、私の命と引き替えに人間達を、動物達を、なによりも地球を守るだけだ」
    「貴方は人間達を守るためにご自分の命を捨てるのですか!?人間達が私達にしてきたことを考えても、人間を救うのですか!?」
    「言ったはずだ。私は人間達を守る訳ではない。母なる惑星、地球を守る為に今日まで生きてきたのだ。その為ならこの命など、惜しくはない」
     セイラに背をむけ、
    「さらばだ、セイラ」
    「はうっ」
    August 25

    5. 激突 (涙)

     肉塊を裂く不気味な音がし、ナタの口元から血が滴り落ちてきた。そしてガイアは、ナタの返り血を浴び、ナタを抱き締めていた。
     倒れ込んだナタから素早くロケットを外し静かに寝かせた。涙を流し、言った。
    「その名とロケット……、確かに返してもらった。…………許してくれ、ナタ…」
     ナタの血がサラサラと消え始めていた。
     ナタはそれを、無言で見つめていた。
     壁が消え、セイラがナタのもとに駆け寄り抱き上げた。
    「ナタ!しっかりして!」
     弱々しくナタはセイラを見てニッコリと笑った。
    「いやよ、いやよナタ。お願い、死なないで!」
     泣きながらナタを抱き締めると、ナタはセイラの肩に手を置き、震えた声で言った。
    「セイラ。ガイア様を恨まないで。ガイア様は泣いていた。俺はもうすぐ死ぬけれど…、死んで、身体は消えてしまうけど、ガイア様を、恨まない、で…」
     セイラは大きくかぶりを振り、
    「そんなこと、言わないで、お願い」
    「…ガイア様は、俺の為に泣いてくれた。俺はそれだけで充分幸せだから、だからセイラ、俺の敵を討とうなんて思わないで。セイラは、死なないで……」
     ナタの頬に一筋の涙がつたった。が、その涙は、地面に届く前に、灰と化した。
    「大好きだよ、セイラ。俺を育ててくれたルスカにセイラ。…二人とも大好きだから、死んでほしくない。…ルスカが死んでしまった今、セイラだけでも、…生きて」
     弱々しくナタは笑った。
    「いやよ、ナタ。私が生きるのだとしたら、せめて貴方だけでも一緒じゃなきゃ…」
    「そんなこと……言わないで、セイラ」
    「ずっと一緒だったじゃない!今更、私を一人にしないで!」
    「…大好きなセイラ。この地で俺はセイラを見ているから………」
     ニッコリとナタは笑った。
     直後、セイラの肩から手が滑り落ちた。
    「…ナタ?嘘でしょう?…ねえ、ナタ!」
     ナタの身体が灰の塊となり、風にのってセイラの手の中から消えていった。ガイアにかかったナタの血も、消えた…。
     

     …やっと、答えが出たよ、セイラ。俺は、ガイア様にこの名を返す為に今日まで生きてきたんだ。永い間生きてきたのは、その為だったんだ。
     俺はもういないけど、セイラは生きなきゃ、ダメだよ……。


    「ぐっ……!」
     ガイアの身体中に激痛が走った。
     ルスカを殺した後のように再び血を吐き、身体の異変を感じた。

     …やはりっ…。俺の身体は持つのか?地球の危機がもうそこまで迫っている。それまで、この身体は持つのか?

     直後、地球の悲鳴を聞いた。
    「何!?」

    August 24

    5. 激突 (戦い)

     激しい爆音とともに木々が燃え、煙りが空へ上がった。
     その煙りを見た山一つ越えた所にあるこの公園の管理局は山火事と判断し消防者を呼んだが、誰も悪魔の地に行こうとはしなかった。
     ナタの放った閃光がガイアの頬を掠り血が細い線となりにじみ出てきた。すかさずセイラが閃光を放ったが、それを片手で払い除け閃光は木々にぶつかり燃え出した。
     ガイアの脳裏に、さまざまな思い出が蘇ってくる。
     短い間しかこの村にいられなかったのに、なぜこんなにも懐かしいのだろう。村人が陽気に笑い、子供らが駆け回り、私は最長老殿や村長殿といろいろな話しをする。
     野望、憎悪、孤独という言葉を知らない心を持っていた優しい村人達…。セイラやナタも、そしてルスカも、憎悪に歪んだ顔よりも、幸福に満ちた温かい顔が似合っている。
     セイラとナタ同時に放った閃光をかわしガイアは空を飛び叫んだ。
    「天と地と水の神に誓った言葉のとおり、ナタ!親友の名を返してもらおう!!」
     放った閃光がナタに当たった。
    「ナタ!」
     悲鳴に近いセイラの声が辺りに響いた。
    「お前の動きを封じた。……死んで、もらおう」
     天に向けて右手を上げた。すると一筋の光りが降ってきてガイアの手を包んだ。その光りはゆっくりと剣の形を作り、光りが消えた時には立派な剣があり、それを強く握り締めた。
     セイラはガイアめがけ閃光を放つが、簡単にかわされ反対にガイアの閃光をよけようとし足首を捻ってしまった。
     ガイアはセイラの攻撃を避けるためセイラの回りに見えない壁を作りだした。
    「う…あっ…。セ、セイラ!!」
     身動きの取れないナタの悲痛な叫びが辺りに響いた。
     剣を構え、ナタめがけて走り出した。
    「うわぁぁぁぁ!セイラァ!」
    「いやぁぁぁ!ナタァ!」